大井川通信

大井川あたりの事ども

再び、フィギュアを買う

ほんだらけで、古本を買う。半世紀前の日本文学全集で『椎名麟三集』が300円。読み終えたアンソロジーとかぶりの作品がほとんどないのがうれしい。もう一冊は、山崎正和の近著『リズムの哲学ノート』が、新品同様で半額の1100円。山崎正和はけっこう好きだが、まだ読んでいない彼の本を何冊か持っているので、新刊書店では購入をためらっていたのだ。

二冊をもって、レジに歩いていく途中で、ふと書棚の上にならんだフィギュアの箱が目に入った。ほんだらけだから、コミックの他にもフィギュアを扱っているのだ。当然ながら、今までそれらを見て歩くこともなかったし、まして買ったことはない。

ところが、たまたま目に入った箱が、魔法少女まどか☆マギカの「暁美ほむら」のものだったのだ。彼女のフィギュアだから、コスチュームも地味だし、弓をもったポーズもごく穏やかで、シックな印象の箱にも使用感がない。値札も1200円。

その瞬間に、僕は頭の中で複雑で微妙な計算をする。

たまたま手にもっている本は、きわめてかたい本が二冊。フィギュアの箱は地味で、性的な印象は薄い。この三点の取り合わせなら、むしろカルチャー全般に通じている人物という良いイメージが作れるのではないか。フィギュアの質はわからないが、おそらく定価の半分以下だろうし、無駄になってもいいくらいの価格だ。

こういう時は、考え出すと買えなくなる。僕は、歩きながら即座にその箱を手に取ると、まっすぐにレジに向った。そしてわざと気にしていない風を装って、フィギュアの箱から堂々と店員に差し出した。

こうして、突発的に、人生で二度目のフィギュア購入体験をしてしまったわけである。唯一の誤算は、この開封済みのフィギュアが、アマゾンの新品で1300円で売られていたことだ。

 

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