大井川通信

大井川あたりの事ども

近所は宇宙だ

近ごろ、ネットのコマーシャルでこのキャッチコピーをよく見かける。

コロナ禍で、観光業は、マイクロツーリズムという近場への観光に活路を見出そうとしている。同様に飲食業も、近場での需要の喚起をねらっているのだろうか。コマーシャルの内容は、ネットを上手く使えば、近所で意外に美味しいお店を見つけることができるというものだ。

しかし、さすがコピーライターだ。近所は宇宙だとは、うまいことを言う。たぶん、考案者の想定をはるかに超える大切な意味を、この言葉は指し示している。大井川歩きで僕が常々味わっている思いが、このキャッチコピーそのままだからだ。

近所には、当たり前の自然とともに謎めいた自然が、植物と鉱物と動物が、昆虫と魚類と鳥類とが息づいている。人間の各時代にまたがる壮大な営みと微小なふるまいの痕跡とその現在が込められている。

宇宙というからには、その外部は存在しない。あるいは、外部と思えるものも、境界の内側に取りこんで、一切を内部化し、独立し完結して存在している。

和洋中の料理の名店が思いがけなくそろっている、というぐらいのことではないのだ。