大井川通信

大井川あたりの事ども

『マネジメントの基礎理論』 海老原嗣生 2015

サラリーマン生活が最期を迎える頃になって、大慌てで仕事やマネジメントに関する実用書を読んでいる。僕が所属してきたのは、ある意味とても緩い職場で、仕事の専門性も高いとはいえなかったから、こうしたビジネス本がそのままあてはまるような経験は乏しかった。

ただよくよく思い返してみると、40代前半の頃、経験不足にもかかわらず相当ハードで多忙な職場に配属されてとまどっている時、直属の上司から、具体的なやり方こみの支援をていねいに受けた記憶がある。

相手に与えた「恩」はどんな小さくてもしっかりアピールして(恩に着せて)おけば、後日それを材料にして相手の譲歩をひきだすことができること。言葉の裏側にある相手方の心情やもくろみを読み取ること。そうした交渉術について、実地で教えてもらった。そのとき身につけたことは、その後自分の仕事上の武器や財産としてずっと役立っている。

自分が上司として、この本が教えるような部下への支援ができたかというと、自分の専門性の欠如もあって心もとない。ただし、部下の仕事をよく観察することと、内発的動機(モチベーション)に気を配ることは、かろうじてやってきたとは思う。

この本は、前回読んだ『即効マネジメント』の内容(個のマネジメント)とともに、組織全体の活気をどう保つか(組織のマネジメント)についても書かれている。

これを要約すると、組織のトップは、誤解の余地のない簡単明瞭な骨太の支持を出すこと、その組織が本来持っている強み(コア・コンピタンス)を軸にすること、インフォーマルな人間関係をうまく使うこと、ということになる。これらについては、僕自身が手探りで身につけてきたことと重なる部分が大きい。

大きな組織を離れるとはいえ、まだ当分は仕事を続けていくことになる。仕事上の人間関係に対処していく上で必要なエッセンスを凝縮したマニュアル本として、今後も座右の書としたいと思う。

  

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