大井川通信

大井川あたりの事ども

丘陵を歩き続ける柄谷行人

新聞購読をやめてしまったけれども、気になる記事はある。たとえば、年末恒例の書評委員による1年間の出版の総まとめみたいな記事。昨年柄谷行人が面白いことを書いていたから、今年の彼の発言がなんとなく気になっていた。

今年の「書評委員この1年」というコラムの中の柄谷のコメントはこうだ。「去年と同様、毎日、家で同じ論文に取り組み、人にも会わず、近所の多摩丘陵を歩きまわる日々をすごした」

平凡な近況報告と思うなかれ。柄谷が、昨年に引き続き、丘陵歩きのこと(だけ)に触れているのは、そこに批評的意図があるはずなのだ。そこに思想的で発見的な何事かがあるからこそ、彼はモノに憑かれたように近所の丘陵を歩き続けているのだろう。

僕は若いころ、柄谷の書くものにずいぶん啓発され励まされた。今は、彼の歩く姿勢に励まされている。

 

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