何年かぶりかで、筑豊の内野さんの工房(杜の舟)に展示会を見に行く。20年以上前に、地元の宗像での出張展示会を見てからのお付き合いで、特に正月恒例の展示会は、その年の干支の木工作品が目玉で、年中行事のように参加していたが、ここしばらく足が遠のいていた。コロナ禍も原因の一つだろう。
それだけでなく妻の意向というか機嫌も大きい。小物づくりをライフワークにしている妻は、小物を含む木工展には興味を持っていた時期もあるが、もう飽きてしまったのかあまり行きたがらなくなった。
しかし、今回はさほど嫌そうでもない。以前購入した猫の掛け時計の機械部分が壊れてしまったので修理してもらうつもりだという。
展示会は、いつものように一階のお店が内野さんのスペースで、二階に参加作家の販売コーナーが並んでいる。木工の若い作家も何人かいたが、芸術家肌と職人気質を兼ね備えて長年研鑽をつんできた内野さんの作品と比べられるのは、気の毒な感じがした。
前から知っているステンドグラスのお店も出ていて、妻はそこで小物を買った。以前この展示会で出会って妻が気に入ったために、行橋のお店まで夫婦で出かけたのは昨年のことだ。それがきっかけで、僕は井手先生を知るようになった。内野さんの展示会なくして、僕と井手先生の縁はなかったはずである。これも不思議なことだ。
妻は時計の修理の依頼だけをするつもりだったから、それでは申し訳ないから僕は自分のお金でヒヨコの作品を選んで、妻に買わせるようにした。いつものように紙袋に購入作品の絵を描いてくれる内野さん。妻には、ずいぶん久しぶりですね、と声をかけたそうだ。いろいろな意味で目立つところのある妻は、印象に残っていたのだろう。
帰り、近所の明治炭鉱の跡を見る。古い炭鉱住宅も、旧本社事務所も、少しずつ朽ちながら、しかし時間の流れはとてもゆっくりしている。筑豊の山中から宗像の自宅まで、約一時間、妻がとおしでハンドルを握った。運転のコーチとして、これもうれしい。