大井川通信

大井川あたりの事ども

原田さんにインタビューする

コメダ珈琲の駐車場に軽トラが停まっている。いくら田舎でもコメダのモーニングに軽トラで乗りつけるのは、村の賢人原田さんくらいだろうと思って入ると、案の定、いつもの席に陣取っていた。

いつもなら挨拶して立ち話するくらいだが、今日は覚悟を決めて、原田さんのテーブルの向かいに座り、じっくり話を聞くことにした。僕は、昨年くらいから原田さんの人生の聞き取りをしようと思って、本人にもそう予告していた。

しかし、10年以上の付き合いで、実際にはすでに聞いていることが大半だ。それを時系列に沿って再確認して記録することが目的になる。新鮮味はない作業だから後回しになっていた。

二時間近くかけて、二十歳くらいまでの出来事を聞く。原田さんの人生を四期に分けるなら、一期は、高校での禅寺への家出を含む未成年時代。第二期は高森草庵と伊那での10数年。第三期は結婚後の三重での会社員生活。第四期は九州移転後のムラ作りの20年ということになるだろう。

本格的に録音でもしてとも考えていたが、やはりところどころ質問を入れながらのやり取りを書き留めるという自分にあったやり方がいい。メモをもとに文章化すると、抜けている部分やもっと掘り下げたい部分がみつかるから、それをもとに再度の聞き取りをするつもりだ。第二期、第三期と進む中でも随時さかのぼって内容を補充していく方法をとることになるだろう。テープに単線的に残せるような物語ではないのだ。

原田さん自体が、自分の経験に何度も立ち戻ることで考えを踏み固めるという生き方をしている。その時々の結晶がおびただしい詩や警句となっているのだ。「詩を食べる店」でその結晶は今でも何度でも新鮮に取り出されている。

ようやく記録に踏み出せてことは良かったと思う。これもまた年内を目標に仕上げることにしたい。