大井川通信

大井川あたりの事ども

アルバートをみんなで食べる

昨日で仕事が一区切りついたので、午後から職場をでる。とくに予定もないので、ネパール料理店ナングロガㇽにランチを食べにいくと、店の前に自転車をとめているネパールの若者にどこか見覚えがある。

近づくと、職場の地下のコンビニでバイトしている二人だった。同じ店にダルバートを食べに来たというのでいっしょに階段をあがると、午後から店は貸し切りだという。僕が、近所のルンビニはどうだろうかと提案する。僕はカレーばかりだと思ったが、そこにもダルバートのメニューがあるそうだ。それで歩いて数分で吉塚商店街近くのルンビニへ。(後日メニューを見たら、ナングロガルにはダルバートの学生料金があるので、学生に人気なのかもしれない)

同じバイト先の二人は友達で、今は同じ日本語学校に通っているという。今は2年目で、来春からは同じ大宰府の大学に入学するという。僕はネパール語を交えながら、彼らと話をする。

ビシャールさんは、首都カトマンズ出身の25歳。お姉さん(ディディ)が二人いるそうだ。ディープさんは、観光都市ポカラ出身で23歳。弟(ダイ)と妹(ダイニ)がいる。

ビシャールさんは、店主にむかって「ダイ!」と呼びかける。本来は兄の意味だが、年長の男性に使うというのは、語学書の解説通り。初学者なのでネイティブのちょっとした言い回しにも感激する。

ネパールの日常の食事はアルバートと聞いているが、彼らもいつもアルバートを注文するみたいだ。食事は一日二食で、このランチと夕食を食べる。二人とも日本式にスプーンを手にしたが、日本人にあわせてくれたのかもしれない。ディープさんは、スプーンを数回ナプキンで拭っていたが、彼らの感覚ではむしろ使いまわしのスプーンの汚れが気になるのかもしれない。

彼らは、食器の真ん中に盛られたご飯の山を崩して、それにダル(豆のスープ)とカレーを少しずつかけながら食べていく。なるほどこう食べるのか。ダルバートは4店舗めだが、今までで一番美味しく感じたのは、本場の食べ方を学べたのと、何より知人と話しながら食べられたからだろう。

ビシャールさんが、お代わりを頼むと、店主が小さな鍋のようなものを持ってきて、大盛のごはんとスープを継いでくれる。もう一皿食べるのと同じだ。若いからお腹が空くだろうし、二食だからしっかり食べておくのだろう。これで800円弱という料金設定はかなりお得だろう。同胞のための特別料金なのかもしれない。僕は当然「プギョ」(充分です)といって、お代わりは辞退する。

二人は遠慮していたが、会計は僕が支払った。あとでネットで情報を探すと、ネパールでは、食事に誘った方や年長者が支払うのは普通の習慣らしいので安心する。二人と店の前で別れてから、商店街のアジアンプラザにいたバストラさんに今の出来事を興奮して報告する。僕が自宅近くのネパール人の店ではダルバートが食べられないことの不満をいうと、吉塚周辺には多くのネパール人がいるからダルバートの需要があることを教えてくれる。

ついでにドキュメンタリー『カレー難民の謎』を話題にすると、本書の中で「カレー移民の里」として紹介されているバグルンのことは、バストラさんもご存じだった。ご出身のポカラにも近い場所だし、やはり有名な話なのだろう。