お正月に和歌神社を参拝したとき、拝殿の掃除をしていた組長さんご夫妻と話をした。一か月ばかりまえに、力丸ヒロシさんの奥さんが亡くなったという。
大正14年生まれのヒロシさんからは、ヒラトモ様やミロク様、大井炭坑のことなど、大井村の昔の様子を何度もくわしく教えていただいた。昭和2年生まれの奥さんは小柄で無口な人だったけれど、ヒロシさんが元気な時には二人で家の前の畑に出ていた姿を覚えている。
そのヒロシさんも、数年前から施設に入ってしまい、東京から単身戻った息子さんが家を守っている。ヒロシさんの妹で力丸家にとついだミズエさんも入院して大井を離れている。ミズエさんの隣家の力丸本家のムツコ(大正15年生まれ)さんも、大井始まった山伏の話を残して亡くなってしまった。
組長さんからは、ヒロシさんより1学年下の安部マサオさんも、今では施設に入って家は空き家になっているという話を聞いた。僕もマサオさんからは、ヒロシさん兄妹と伊勢参りなどを一緒にした仲だったという話を聞いたことがある。
僕が聞き取りをした中では、一番年長だった大正11年生まれの吉田シゲミさんも何年かまえに亡くなった。シゲミさんの教えてくれた戦勝祈願の三社参りや五社参りの話は大井の戦争中の暮らしをよみがえらせてくれるものだった。
この5年ばかりで、ムラの大正生まれの長老たちでこの世を去った人が多い。ご冥福をお祈りしたい。