え、こんなに小さいの。
ヘリコプターかドローンの映像のように、上空から、その温泉町に近づくと、くぼ地に数十個の古い家屋が密集しているだけの場所だった。
歩いてみると、うらぶれた温泉町の突き当りには廃屋のような旅館があるばかりだ。街並みに不似合いな4階建のホテルを見つけるが、客がいるのかわからないくらいひっそりしている。扉をおすと開いたから、営業はしているのだろう。
温泉町を出ると、低層の町役場のような建物があって、その並びに駅がある。そこだけはさすがに人がいて、やや活気がある。太く短い柱が並び、その上に不必要なほど大きな組物をのせた木造建築で、町の入り口を飾るために駅だけは多少立派にしたのだろう。
僕は東北で名高い温泉町が、これほど貧相であることに驚いた。昔の素朴なイメージを守っているのが、都会人の人気の秘密かもしれないとも思った。