課題図書で読む。自分ではまず手を出さないSFの名作を読めるのも、読書会のありがたさだ。とはいっても、あまりSFらしい作品ではなかった。
ずっと未来の地球からずっと離れた惑星が舞台で、そこに住む人類の文明の状態は、さほど発展していない。惑星では、文化の異なる二つの国があって対立している。
ずっと未来の地球が加わる平和的な同盟から単身派遣された使節である主人公は、その惑星の国の政府の人たちに、この同盟に加わるように説得する。アナログな世界でアナログな方法での交渉が話の中心だから、SF的な飛び道具はほとんど出てこない。
前半は、この使節も含め、異なった出自と文化と慣習とこだわりをもった個人たちの、ひどくやっかいな交渉の記録である。当然、交渉は遅々として進まないが、人間とは実にめんどくさく、メンツと不信と前例に縛られた存在であることがリアルに感じられて、先が見えず、読みにくく、暗いけれども、とても重厚な物語になっている。
一方、後半は、同盟を成立させて惑星を救うことを目的にした、二人の信頼と友情と愛と冒険の物語になってしまう。こんどは雪原での逃亡劇がねちっこく描かれるが、ストーリーの方はすっきりしすぎてしまって、結末も含めてあっけない印象だった。
この惑星の人類は両性具有の設定で、ずっと未来の地球人であるはずの主人公が、男性・女性という二つの性区分へのつよいこだわりを持っている描写には違和感があった。このあたりに、この作品の描かれた50年前の価値観が反映されているのだろう。