大井川通信

大井川あたりの事ども

クモとムカデとヘビ

職場の網戸に変な虫がしがみついている。一センチばかりの小さな身体が、薄い緑一色で、足には赤味がさしている。自分の体長より大きいくらいのクワガタ虫のような大きなカマを広げているのが奇妙なのだが、よく見ると長い前足だった。

図鑑で調べると、クモの仲間だった。ワカバグモという名前は、その美しい身体の色から来ているのだろう。巣をはらずに、大きく広げた前足で獲物を待ち伏せしているらしい。このフォルムが独特で美しいのだ。獲物を捕るためのクモの巣が見事な造形をしているのと共通しているのかもしれない。

昼休みに近所を散歩していると、塀際を大きなムカデがはっている。出会う機会はめったにないからぎょっとしたが、やはり異様な姿だ。赤い頭、たくさんの節がつながる胴体は、よく見ると濃い青か紫のような独特の深みのある色合いだ。波立つように規則的に動く黄色い脚。金属的で、機械のような印象も受ける。

昔一人暮らしをしていた古いアパートにたまにムカデが侵入してくることがあった。夜中、ふとんに潜り込んできたりする。こんなものと自室で対決したのだから、相当のパニックになっても仕方ないと思えた。

雑木や竹の生えた丘に上がると、今度は足元にヘビが動いている。細長いばかり身体なのでシマヘビかと思って柄を観察すると、体色といい模様といい、いつか見たマムシとよく似ている。マムシの子どもだと思って、木の枝で追い払った。後で調べると、アオダイショウの子どもがマムシの模様とよく似ていることを知る。とばっちりで殺されることもあるそうだ。

ちなみに、ヘビはもちろん、クモもムカデも虫ではありません。