今日は猫の九太郎の二歳の誕生日だ。しかしここのところ九太郎は、ずっとご機嫌ななめで気がたっている。原因は、先月から同居猫になったリボンの存在だ。
ボンちゃんが来るまでの九太郎の生活はこうだ。
朝起きると、妻に「おかーん(おかあさん)」「おあよー(おはよう)」「おあよー」となく。冷蔵庫の前で「ごあーん(ごはん)」「ごあーん」とないて、えさをねだる。おなかいっぱいになると、お気に入りの椅子の上でねむる、ひたすらねむる。裏の家で、子犬のクマちゃんが鳴くと、裏口までそれを見に行く。スズメが鳴いているとそれも見る。椅子にもどってねるか、ぼーっとしている。ひたすらぼーっとしている。夜になって、ごあーんを食べる。長男が仕事から帰ると、抱かれる。いやがる。おろされる。すこしあそぶ。またねる。
なんとおとなしい、おだやかな猫だろう。このままではぼけてしまうのではないかと心配するくらいだった。しかし、そこにボンちゃんがやってきた。九太郎は、生まれて二か月しか猫たちとの暮らしをしておらず、あとは二年近く、家族の大人とだけ穏やかに暮らしてきた。
いっぽうボンちゃんは、生まれて六か月間、たくさんの猫にもまれて育っており、人なれもしている。経験値のちがいは明らかだろう。ボンちゃんは遊ぼうとちょっかいを出す。追いかけまわす。九太郎のエサをとる。トイレも使う。おまけに近ごろは、去勢手術前のボンちゃんは、春先のためか変な鳴き声で九ちゃんを誘惑する。
家族は、先住猫ファーストという教えを守っているのだが、それでも九太郎の表情はまったく変わってしまった。いつも何か考えているようで、ぎらぎらしている。ボンちゃんへの対抗心が隠せない。妻にはどうにか抱かれるが、僕が抱こうとすると、いらいらしてかみつくようになった。触らぬ神に祟りなし、だ。
経験者の話によると、同居を始めて二か月間くらいで落ち着いてくるという。以前の一日中まどろんでいた九太郎の姿は、本来の野生の猫とは程遠かっただろう。適度の刺激があったほうが、九太郎も健康で長生きできるのではないかと、家族で話している。