大井川通信

大井川あたりの事ども

府中市美術館への感謝 ♡

夏風邪をひいてしまった。風邪は今年何度目だろう。ここのところずっと体調も思わしくない。気分転換をしようと、書棚の美術展のカタログをペラペラとめくる。

地元の美術館のものが多いが、東京の有名美術館のものも目につく。以前(2000年前後くらいまで)は都心のデパートも充実した展覧会を開催していたことを思い出す。そんな中で、東京多摩地区の府中市立美術館のカタログが多いことに気づいた。近年は、よほど気に入ったものでないかぎりカタログを購入することはないのだが。

府中は実家のあった国立の隣街だし、今の帰省先である姉のマンションのある国分寺からはバスで一本なので、時間がある時には寄るようにしている。美術館は広い閑静な公園の一角にあって、中央線からも京王線からもアクセスが悪く、正直ちょっと鄙びた印象さえある。しかし企画展には力のこもった見ごたえのあるものが多いのだ。その辺の事情は素人にはわからないが、おそらくすぐれた学芸員さんがいるのだろう。

古いものでは、2000年発行の「生誕100年記念牛島憲之展」があるが、これは翌年地元にきた巡回展でも観覧したと思う。府中市美術館には常設スペース(記念館)があって、いつでも牛島作品を観ることができる。柔らかく抽象的な風景は日本の情景の一面を愛おしいまでに突きつけてくる。

2014年の「生誕100年小山田二郎」展のカタログもある。小山田の絵は、同時代の日本の洋画家と共通するどんよりした重苦しさをベースにしているが、それにとどまらない痛々しい狂気を感じさせるものだ。

これは昨年のものだが、「発掘・植竹邦良」のカタログもいい。僕の好きな50年代、60年代当時の社会派作家(中村宏池田龍雄)の流れを濃密に湛えて、無名ながら自己のモチーフを愚直に追求した軌跡を丁寧にまとめて読みごたえがある。僕には見慣れた一橋大学構内写真のネガをまとめたページもある。少し前に植竹さんの「日食虚無僧」がネットオークションに出ていて、手の届く金額だったのに入札しなかったことを今になって激しく後悔。

今年にあった「ほとけの国の美術」の公式図録も充実した内容で、具体的な作品を通じた日本仏教の入門書として役に立つだろう。あらためてながめるとカタログとして書棚に寝かしておくのはもったいないと思う。ぜひ読まねば。