大井川通信

大井川あたりの事ども

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ファミレスあるある?

週末、妻に電話を入れる。「今週やっと終わったから、帰りジョイフルに寄ってきていい?」「いいよ」 ジョイフルでは、いつでもドリンクバー付きのモーニングが注文できる。ワンコインでモーニングを注文し、ドリンクバーを飲み継ぎながら、好きな本を読んだ…

ファミレスの自己組織化論

ある町の教育研究大会で、旧知の女性教師の公開授業を観る機会があった。会うのは、ほぼ20年ぶりになる。当時、ある事務所で働いていたとき、彼女は同じ係の臨時職員をしている教員の卵だった。 経緯はまるで覚えていないのだが、彼女と一度、二人だけの読書…

脱力系のカトリヤンマ

日の射さない林の中を、大柄のトンボが飛んでいる。見た目はヤンマのようだが、ハグロトンボみたいに、はかなげに羽をばたつかせて飛ぶ。みしみしと大男が歩くようなオニヤンマの力強さや、高速ギンヤンマの自由自在な飛行とは比べるべくもない。 近くの枝に…

クロスミ様とアミダ様

久しぶりに、クロスミ様にお参りしようと思って、朝一番で近所の里山を目指す。数年前に、ミカン畑がソーラー発電に変わってしまってから、山道にトラックが入らなくなってしまったために雑草が道を覆い隠している。イノシシもこわい。あえなく断念して降り…

名探偵登場!

エドガー・アラン・ポーの『モルグ街の殺人事件』(1841)は、史上初めての推理小説であり、このジャンルにおける原型を作り出したといわれる。以下は、素人探偵のデュパンが、語り手を相手に謎解きをはじめる場面の描写。 「その間も、デュパン君は、依然と…

天邪鬼について

読書会の課題図書で、岩波文庫のエドガー・アラン・ポー(1809-1849)の短編集を読む。『黒猫』『天邪鬼』で展開されている「あまのじゃく論」が新鮮だ。これが他の諸短編を貫いており、全編「天邪鬼小説」として読めるのではないか。 新鮮さの由来は、天邪…

ある経営者の信条

次男は、特別支援学校を卒業して、昨年春からある介護施設に勤務している。グループ会社を統括する社長は、地元では有名な起業家だ。入社式には妻が参観したのだが、隣に座った社長が気さくに声をかけてくれて、自社を好意的に取材しているビジネス書を直接…

50銭の思い出

ピカピカの50銭銀貨を手に入れて、うれしかったものだから、妻に自慢してみる。銀貨を手に取った妻は、こんな思い出を話し出す。初めて聞く話。 子どもの頃、博多の下町には、いろんなものをリアカーで売りに来た。オキュウトや豆、豆腐、それにさお竹や金魚…

とあるブックカフェで

近在の集落に面白いブックカフェがあると聞いたので、訪ねてみた。真新しい住宅街に囲まれて、ひっそりと鎮守の森と集落が連なる路地がある。その突当りに、蔵を改装したカフェがあった。 ご主人と奥さんが、主に休日に開いていて、お茶を飲みながら、棚に並…

木の穴の恐怖

ヤマガラが、木の幹に出来た穴に何度も出入りしているのを見てから、林を歩いていても、木の穴がむしょうに気になりだした。上を向いた木の穴には、水がたまっていることがある。ヤマガラは、そこで水浴びをしていたのだ。 その同じ穴の中に、今度は、スズメ…

古銭を買う

僕には、ストックブック一冊分のささやかな古銭のコレクションがある。小学生の頃通った「国立スタンプ」で、わずかな小遣いで買いあつめたもの。その後、立川の中武デパートの古銭屋で、思い出したように手を出したもの。それに、母方の実家のおじさんから…

ナガサキアゲハの幻惑

黒いアゲハが優雅に飛ぶ姿には目を奪われるが、残念ながら種類を見分けることができない、と以前に書いた。カモ類の識別ができないのと同じで、見かけがどれも似ているのだ。しかし、いつまでそんなことではすまされまいと、わかりやすい特徴から頭に入れて…

コジュケイの「ぴ~ぁ」

朝、周囲の林から、「チョットコイ、チョットコイ」と大声で鳴く鳥の声が聞こえる。近頃は、春先ほどには耳にしなくなったが、コジュケイだ。たいていはヤブの中だが、たまに道路わきにその腰高の姿をみせることもある。ウズラとニワトリのかけあわせみたい…

『カセットテープ少年時代』 マキタスポーツ×スージー鈴木 2018

「80年代歌謡曲解放区」が副題。BSテレビでの二人の対談番組の書籍化。 サザンやチェッカーズやユーミン、松田聖子など、80年代当時に爆発的に売れて、時代の音楽としてすっかり耳になじんでいるけれども、語られることが少なかった歌謡曲を、縦横無尽に語り…

『少女不十分』 西尾維新 2011

はじめから逃げをうつようだが、西尾維新という作家も、彼が描く作品のジャンルも、ほとんど何もしらない。おそらくジャンルによる特有の約束事や、楽しみ方のようなものがあるのだろう。それだけでなく、巻末の作品リストや、帯でのコピーから判断するかぎ…

ツバメの再来

僕の住む街では、ツバメは、三月の中旬にやってきて、八月の終わり頃に姿を消す。初めて見た日は印象に残るが、最後に見た日というのはなかなかわからない。9月に入って、あれそういえば近頃まったく見ないな、と気づくくらいだ。 ツバメを見かけなくなって…

山雀の五右衛門風呂

ヤマガラ(山雀)は、住宅街にもよくでてくるシジュウカラ(四十雀)によく似た小鳥だ。シジュウカラは、黒白の頭に灰色の羽をもつ小鳥。こうかくと地味なようだが、色の塗分けがきれいで、モダンな印象。 一方、ヤマガラは、お腹が濃いオレンジなのはいいが…

榜示(ぼうじ)とクスの木

ようやく涼しい日が続くようになってきた。今年は、7月から連日の猛暑が続き、8月のお盆がすぎても、暑さが手をゆるめなかった。35度超が当たり前だった。足首を痛めるというアクシデントも加わり、しばらく歩いていなかったのだが、今朝久しぶりに、住…

天体望遠鏡の話

実家の片付けをしていたら、押し入れの奥に細長い段ボールが立てかけてあるのを見つけた。すっかり忘れていたが、小学生の時に買った天体望遠鏡である。 アポロ計画をはじめとする宇宙開発にも影響されたのだろうが、当時の子どもたちの間で、天文学や天体観…

9.11の夜

どうということのない日常の出来事が、いつまでも新鮮に思い出されるということはあるが、やはり社会的に大きな事件は、はっきり記憶に残るものだ。 2001年の当時は、仕事が忙しく、深夜の帰宅が当たり前だった。長男が小学校に入学し、次男は2歳に。頭を床…

『くだもののにおいのする日』 松井啓子 1980

2014年に新装復刊された詩集を購入した。学生時代、詩をよく読んでいた頃に活躍していた詩人だから、名前くらいは知っていた。 ひとりでごはんを食べていると/うしろで何か落ちるでしょ/ふりむくと/また何か落ちるでしょ ちょっと落ちて/どんどん落ちて…

羽田信生先生のこと

今年も、近所の浄土真宗の勉強会に、米国から羽田信生先生が講義に来られたので、公開講座に参加した。8年前に初めてお話をうかがってから、講義を聴講するのは5回目になるが、そのつど強い印象を受けた。仏教徒でもなく、宗教についても門外漢の僕が、仏…

疲れる若者

『通勤電車で読む詩集』で、トーマ・ヒロコという若い詩人の「ひとつでいい」という詩を読んだ。以下、末尾を引用する。 おはようも/ありがとうも/ごめんなさいも/さようならも/おやすみも/もう要らない/この世を生き抜くためには/挨拶はひとつでいい…

「当事者マウンティング」について(その3)

かなり以前のことになるが、ある「当事者」の運動において、差別葉書が連続して送付されて話題となったことがあった。同じ被害者のもとに届く差別葉書は何十通にも及んで、その内容はエスカレートしていく。被害者のことは運動の機関誌でとりあげられ、集会…

セミの死によう

生き様(ざま)という言葉はよく使われるけれども自分は嫌いだ、という誰かの文章を読んだことがある。たしかに、力みかえった誇張が感じられるし、音の響きもうつくしくはない。同じ漢字でも、「生きよう」と読んだ方が、やさしく、軽い語感となる。 ここで…

「当事者マウンティング」について(その2)

「当事者マウンティング」という造語について、それが、多数派であり、強者である「当事者」をターゲットにしているから、問題ないのではないか、ということを書いた。 たしかに、この言葉が、少数者であり、被差別者である「当事者」に対して使われる可能性…

「当事者マウンティング」について(その1)

たまたまネットで、「当事者マウンティング」という記事を読んで、しばらく考え込んでしまった。若いころ、この問題をめぐってずいぶん消耗した記憶があるからだ。 一読して、あるカテゴリーの当事者というくくりの中には、多様な要素がある。その差異性を抹…

アンソロジーを読んでみよう

『通勤電車で読む詩集』小池昌代編著。NHK出版の生活人新書の一冊として、2009年に発行された後、増刷を重ね、同新書で別のテーマのアンソロジー企画につながっているから、詩の本としては、ヒットしたものなのだろう。 いつもの採点法をざっと使うと、全41…

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亡くなった父親は、ちょっとした小物などでも、目立たない場所に購入日を書き込む習慣があった。数字の羅列なのだが、まずは西暦の下二桁。つぎに元号、そのあとに月日がつづく。 しかし、今回、小さな収納箱の引き出しの裏に、表題の長い数字の並びを見つけ…

思いやる力

次男は、言葉を身に付けるのが遅く、軽度の知的障がいがある、ことになっている。しかし、相手の気持ちをおしはかって、相手のために行動する力は、とてもつよく、ふかい。 子どものころ、なじみの駄菓子屋が閉店した時に、おばさんに自分から感謝の手紙を渡…