大井川通信

大井川あたりの事ども

ビブリオバトルに行ってみた

知的書評合戦といわれるビブリオバトルに初参加した。たまたま出かけた地元の図書館でやっていたので、飛び入りで観戦してみたのだが、観戦者はだいたい20人ほど。

バトラー(本を紹介する人)は5人で、全員の発表のあとにチャンプ本を投票で決める。発表の時間は5分で、その後の協議は2分。正面には残り時間が大きく表示されて、時間管理は厳格に行われる。

何事も経験だと思って、今流行の「哲学カフェ」や「紹介型読書会」にも参加してみたが、それらは予想通り、あまり得るところのない場所だった。偶然集まった素人同志が自由な形式で言葉を交わすことで、優れたものや面白いものが出てくるなんてことは、ほとんど期待できない。ビブリオバトルについても、同様の偏見を持っていたのだが、これが意外なことになかなか面白い場となっていた。

その理由を、紹介型読書会との比較で考えてみる。バトラーとして臨むのは、読書会参加よりハードルが高いから、読書家としての力量やセンスが高い人が出てくるだろう。しかもプレゼンは単なる紹介とは比較にならないプレッシャーだろうから、相当の事前準備や練習をしてきているはずだ。

そして何より大きいのは、観戦者によって評価され順位をつけられるという環境だ。紹介型なら気楽に自分の趣味嗜好を前面に出すような自己満足の発表ができても、それではビブリオバトルでは低評価しかもらえない。本の内容もプレゼンの言葉も、他者に通じるかどうかの自己点検を加えざるを得なくなる。

観戦者には、各バトラーのプレゼンをほめるコメントと、どの本が一番よみたくなったかを書き込む投票用紙が配られる。この投票基準がまた秀逸だと思った。実際にやってみると、読み手目線に徹して無理なくチャンプ本を選ぶことができるのだ。

それなりに面白そうな本の情報が得られて、個性的に練られたプレゼンを楽しむことができる。観戦者の側も、プレゼンの不足を補ったり、本の魅力を引き出す質問に知恵を絞る楽しみがある。今回は協議があまり活発でなかったので、僕もいくつか質問をぶつけることができた。

基本は紹介型の読書会なのだが、さまざまなルールの縛りを加えることで、実りのある場所となるように工夫をこらしている。僕の経験では、課題本型の読書会でも充実しているのは、事前課題へのレポートを義務付けるなどルールをしっかり設けた会だ。人間の集団というものは、それだけやっかいで手ごわいものなのだと思う。