この時期なので、オンラインでのビブリオバトルで、バトラーになって本の紹介をした。以下は、その時の原稿の一部。
みなさんは、自分の住所を聞かれたら、どんな風にこたえますか?
たとえば、〇〇県△△市✕✕番地、とこんなふうに答えると思います。でも、これは人間が勝手に決めた住所ですよね。だから人間の都合で変わります。
ところで、みなさんは、「自然の住所」というのがあるのをご存じですか? この住所を決めるのは、なんと空から降ってくる雨の水です。雨水は、地中にしみ込んだり下水道に流れ込んだりしないと仮定すると、土地の表面の傾きにそって流れて、近くの川に流れ込むはずです。
こんなふうに雨水が集まる土地の範囲のことを、少し難しい言葉で、川の「流域」というのです。そして川というのはたくさんの支流に枝分かれしていますから、日本全国のどんな土地も、どこかの川の支流の流域ということになります。それを自然の決める住所と考えるわけです。
それで、今日、みなさんに紹介するのが、この『流域地図の作り方』という本です。
この本には、川とその流域の考え方や調べ方が、子どもでも読めるようにやさしく書いてあります。自分の家のまわりの「流域地図」作って、その地図をもって実際に土地を歩いて、身近な自然を深く知り、自然ともっと仲良くなろうという提案をしています。
僕も自分で流域地図をつくって、ダイエットのための運動もかねて、家のまわりを歩いています。それで実は昨日こんなことがありました。
僕の家の近くには大井川という小川が流れています。そのわきに住んでいる友人と話をしたら、川の鯉が、びっくりするくらい痩せてしまっているというのです。
今、この地域では、あちこちで里山をけずって太陽光発電のソーラーパネルを設置していますが、大井川にも赤土が流れ込んで、川の水の栄養分が少なくなってしまったのがその原因かもしれない、と話していました。
こんなふうに、自然というものは水を通じてつながっています。私たち自身も水なしでは生きていけません。環境保護というと大きな問題になりますが、まず、自分の住む場所の水がどんなふうに流れているか、を知ることが始めの一歩になるような気がします。
みなさんもこの本をよんで、自分の家の流域地図をつくり、できたら家族や地元の子どもたちといっしょに、川の回りをあるいてみたらいかがでしょうか。