大井川通信

大井川あたりの事ども

新聞をやめる

今年度は定年退職の年で、それなりの感慨はあったけれども、あと5年間は生活のために同じような仕事を続けるつもりでいた。ところがコロナ体験で、この貴重な期間をもっと別のことに使いたいと思うようになった。

そうなると今の仕事とは、あと九か月で完全に縁が切れることになる。そう考えた時の解放感がすごかった。今の職場や仕事に不満はないのだが、30年間蓄積してきたストレスが大きかったのだろう。

しかし今まで庇護されてきた組織から離れて、新しい環境で自分の力で生きていくとなると、まずは経済的に不安定になるだろうし、老化が進行する中で身体(体力、知力)への負担が大きくなるだろう。この二点の課題をクリアーしなければならない。

今、猛烈に身辺整理を始めているのも、物事との関わりをシンプル化して、残された自分の身体資源をできるだけ有効に効率的に使おう、というねらいをもっている。初めは無自覚だったが、片づけをしながら、その効用に気づくようになった。

経済の問題は、つまり収入に応じて支出を切り詰めればいい。このためには家族の理解と協力が必要だ。それには固定的な経費を見直していく必要がある。そこでまず、隗より始めよというわけで、僕の希望で購読していた新聞を今月いっぱいでやめることにした。

新聞販売店の抵抗があると思ったが(実際にそういう知人もいた)、「コロナ禍で家計が立ちいかなくなって、やむなく止める。この新聞のファンで20年間、何の条件も付けずに自分から契約してきた。経済がもどれば、復活の希望もある。すんなりやめさせてほしい」という、当たらずといえども遠からずの話法を使ったら、わずか数日後の月末でやめることができた。

部屋の片づけもそうだが、積極的に家事も行うようになったので、家族の評判もよく、理解もえられそうだ。

身体(健康)の問題と経済(お金)の問題は、今まで生活の中で長い間、意図的に見ないようにして、目をそらしてきた領域だ。今回のことをきっかけに、そうした身近に放置された「ブラックボックス」をこじあけ、戦略的に関わっていきたいと思う。