扶桑社新書の一冊。著者は山口県のお寺に生まれた現役の僧侶で、アメリカでの研究歴をもつ。読みは「おおぎ しょうじゅん」
仏教のキーワードの英訳による解説と、仏教と日本に関する質問と答えの日英対訳、そして有名な三つのお経の漢語、英訳、現代語意訳とが載っていて、バラエティに富んだハイブリッドの楽しい仏教入門書となっている。
たとえば、「諸行無常」は、「Life is Impermanence(永遠ではない)」という一般的な英訳が示されたあと、「Everything is Changing(物事は常に移り変わっている)」というわかりやすい意訳に置き換えられうえで、「Everything Including Myself(自分自身も含めて) is Constantly Changing 」という補足がなされる。
僕も独学で、羽田信生先生の英文の仏教書を読み続けるということを自分の唯一の仏教修行としているので、この本の知識はとても役に立った。
著者は、仏教を英語で勉強する方が日本語だけで考えるよりもわかりやすくなり、理解が深まったという「不思議な感覚」を経験している。同様な内容を一般の人に講義した際にも、同じような感想が聞けたというが、現に僕もそう考えて、羽田先生の英文だけをよりどころにしようと思いついたのだ。
ただ、この本の目的がそこにないことはわかるが、著者は、この感覚を方便として利用するだけで、そこにある批評的な意味合いを掘り下げようとはしない。そこに若干の物足りなさを感じる。
また、仏教への質問コーナにおいても、「近代テクノロジーの仏教に与える影響」について、真っ先に「新たに伝道の扉を開いた」と答えるのは、いかにも表面的すぎないか。コーナーの趣旨からして目くじらを立てるべきではないのだろうが。