大井川通信

大井川あたりの事ども

塩船観音寺に参拝する

帰省中、レンタカーを借りて、両親のお墓をお参りした。墓地は低い丘陵の斜面にあって、遠く丹沢山系とその向こうの富士山に向き合っている。ロケーションは見事だといっていい。

八高線の金子の駅から歩くときには、霞川に沿って進むことになる。入間川の支流であるこの川を東にたどると、僕の聖地である禅宗様仏殿のある高倉寺が現れる。高台だが途中丘陵は途切れている。

一方、霞川の上流を目指して西に進むと、おなじ丘陵のならびに東京では高名な塩船観音寺の堂宇が現れる。僕は学生時代以来、久しぶりに訪ねた。

山門から先は緩い斜面を登りながら山中に点在するお堂を参拝する形で、地方の大規模の密教寺院を思わせるような貫禄だ。東京では珍しい重要文化財の室町建築が並ぶが、どれもとても簡素である。カヤブキ屋根を支える垂木が竹で組み合わされた小堂もある。

途中で雨に振り込まれ、姉が藪蚊を嫌っていることもあって、境内の半分も見ないうちに降りてきてしまったけれど、主要な建築は見ることができたから満足だった。素朴な建築に、こちらも若いころに山口県で拝観した月輪寺を思い出した。

多摩地区の有名寺院は、子どもの頃の僕にはあこがれだった。拠点を九州に移した今となっては、多摩地区の寺院を見て回る機会も少ないし、素朴で質素な寺の拝観に特別なモチベーションをもつことも難しい。動機は、もっぱら回想、懐旧のためということになるだろうか。それでいいと思っている。