大井川通信

大井川あたりの事ども

日々のこと

橋を渡って

読書会のはじめにある参加者同志の自己紹介で、よく話に聞いていた息子の親友が、その場にいることを知った。お互いに驚いたが、せっかくだから会の終了後、場所を変えて話すことにした。二人で商店街を抜けて、街の中心を流れる川にかかる橋を渡る。このあ…

ブログを書く理由

ネットに弱いということもあって、SNSで何か書く気持ちはなかった。社会人になってからは、何かを発信する欲求や、それで承認を得る欲求については、少人数の勉強会や読書会、個人あての通信の形式で満たすような習慣がついていて、それで不満もなかった。漠…

大学二題

早朝、国分寺駅周辺を散歩。オナガの十羽ばかりの群れが飛ぶ。清宮熱が冷めない早稲田実業の脇を抜けると、住宅街の先に、学芸大がみえてくる。守衛さんに声をかけると、市民には開放していると教えられ、広々としたキャンパスに入った。銀杏等の紅葉が見事…

文壇バーにて

仕事で参加した大きな会議の懇親会を抜け出して、中央線のとある駅前に向かう。目当ての店は、繁華街を縦横に歩き回っても見つからない。ガード下でたまたま自転車を止めている人に尋ねると、びっくりした顔で、今からその店に行くところだと言う。二人がよ…

引揚者と米軍ハウス

終戦後、博多港には、海外の一般邦人140万人が満州、朝鮮半島から引き揚げてきた。博多の街中の聖福寺境内には、引揚者のための聖福病院と、医療孤児収容所の「聖福寮」が作られて、多くの孤児たちが看病を受けたということを最近知った。 聖福寺は、日本最…

同姓同名の会

僕の名前はそれほど珍しいものではないと思うのだが、氏名の組み合わせでいうと、全国に多くいるわけではないようだ。ネットの検索をかけても、同姓同名の人は、せいぜい三、四人しかでてこない。 そのうちの一人は、もうだいぶ以前に亡くなっている人だ。大…

メニエール症候群

歩き出しても平衡感覚がおかしくて、まっすぐ前にすすめない。踏み下ろした床がぐわんぐわんと沈むような感じがする。久しぶりに始まったなと思う。職場のソファーに横になっても、むかむかと気持ちがわるい。頭痛ではないが、後頭部が少ししびれる感じで耳…

封印された自転車(記憶論その2)

どのくらい前だろうか。まだ記憶の衰えをそこまで自覚してなかった頃だった。ただ仕事が忙しく毎晩深夜まで働いていたから、そのストレスが大きかったかもしれない。ある晩、自宅のある駅に戻って、駐輪場にたどり着き、さあ自転車を出そうとして、チェーン…

なぜ同じ話を何度もするのか?(記憶論その1)

ほんの10年くらい前まで、年配の人が平気で同じ話を何度もするのが不思議だった。この話、前に聞いたばかりなのに・・・。非難の気持ちというより、目の前にあるコップがなぜ見えないのだろう、と思うのと同じくらい素朴な疑問だった。いつのまにか、自分…

親と子

この春から長男が新しく住むようになった街へ、親子三人で長距離ドライブをした。マンションの部屋や勤め先を見たり、近所の観光地を家族四人でぶらぶら歩いたりする。 僕がかつて東京から千キロ離れた街で一人暮らしを始めたときにも、両親は訪ねてきた。だ…

理髪店と神社

辞令交付の前日、髪が伸びているのが気になって、夕方、職場近くの「床屋」に思い切って入ってみた。髪を切られるのが苦手で、昔ながらの理髪店でそれも行きつけのところでないとだめだ。職場の地名が店名になっているのも何かの記念になるだろうと、扉を開…

数珠と呪術

長男が友達にしたという笑い話。 夜、リビングに入ると、母親が大好きな心霊番組を見ていたのだが、その姿というのが、画面に向かい、数珠を握って拝んでいたというのだ。 そして、こちらは少し怖い話。 長男が彼女を家に泊めてしばらくの間、邪気を払うため…

歯車

急に視界の中心が盲点のように見にくくなり、視野の左側上部でさざなみが立つようにチラチラしだすが、今回はそれが広がらないうちに収まった。 閃輝暗点だろう。芥川龍之介が自殺の年に『歯車』で描いた症状だ。 ただし僕の場合、どちらの目にも同じ形で、…

なまず

今年で子育てが終わる。 夫婦で、昔子どもたちを遊具で遊ばせた公園を散歩してみる。 冬日が暖かい。 近くの神社まで足を伸ばすと、神様の前で、狛犬と一緒に石のナマズが向きあっていた。