大井川通信

大井川あたりの事ども

合歓の木の話

しばらく前から、ババウラ池の縁に生えた木に見慣れない花がたくさん咲いていることに気づいていた。白い綿毛のハケみたいな花で、先の方はピンクに染まっている。シダの葉のような細かい葉もついている。

どこかで見たことのある木のような気もしてきて、ふと、合歓(ネム)の木の名前が思い浮かんだ。実際にネットで画像を調べると合歓の木で間違いなかった。でも、ちょっと腑におちない。

合歓の木は僕にはなじみのある木だ。実家の隣は雑木林の空き地(僕らは「原っぱ」と呼んでいた)で、武骨なクリの木が多かったのだが、真ん中あたりに一本、細身の合歓の木が優雅に枝を広げていたのだ。毎日のように見上げていた木を忘れるわけはない。

ネット記事の説明を読んでいて、その理由がわかった。ふつう合歓の木は、ある程度高いところで花を咲かす。だから近くでの鑑賞には適さないと。

原っぱの合歓の木も、すっと幹が伸びて、手の届かない高さで枝分かれして、左右に大きく張り出していた。ピンクの花も遠目に見るしかなかったのだろう。近所のババウラ池では、縁の斜面から幹が斜めに生えて、ほとんど水面と平行に枝をはっているおかげで、すぐ目の前に花々を見ることができるので違和感があったのだ。

合歓の木の葉は夜になると閉じてしまうという知識はあったが、間近に観察した記憶はないような気がする。これも葉が高い枝にしかなかったと考えれば、納得がいく。

あの合歓の木も雑木林の他の樹々とともに伐り倒されて、今は何軒かの住宅の敷地になってしまった。それでも、僕はあの樹形を忘れることは無い。

夕方、ババウラ池まで歩いて、合歓の木の葉を観察してみることにしよう。

 

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