大井川通信

大井川あたりの事ども

舞台版『気づかいルーシー』を観る

先々週と同じく、北九州芸術劇場の中劇場で観劇する。前回の失望が大きく、チケットを買っているものの、今回はさぼろうと思ったほどだった。といっても家でのごろ寝ほど精神にも身体にもよくないことはない。気をとりなおして出かけることにした。

コロナ明けに意識的に舞台を観るようして改めて気づいたことだが、舞台には(詩と同じように)好き嫌い、向き不向き、体質に合う合わないがあるということだ。無理なく楽しめて常に発見があるような劇団はごくわずかで、退屈なくらいならいいが、目の前の人間のふるまいに嫌悪感を催してしまったら、観続けることが苦行にすらなる。

これからは、他に目的がある場合以外、楽しめないと予想がつく芝居は選ばないようにしよう。

ということで、『気づかいルーシー』(脚本・演出ノゾエ征爾/原作松尾スズキ)は気楽にながめる気分で観ることにした。そこそこ楽しめたが、特別観てよかったと思うほどではなかった。元気な女の子が主人公で、ウマや王子が出てくるという絵本が原作だから、大人がみるとストーリーはどうしてもありきたりで退屈になる。途中、数十分寝てしまった。

皮をはいでそれを被って人に化けるというシーンが多く、なんとなく大人向きのブラックユーモアやギャグが主流(原作者は絵本作家でなく著名な小説家)で、観客席にいるちびっこたちが本当に楽しめたかどうかは、やや疑問が残る。

中劇場だから、小劇場のような臨場感はない。役者さんたちの歌や踊り、様々な小道具や舞台装置の転換など頑張っているのはわかるが、遠目にみている観客を引き込むのは難しい。子ども向きということなら、6月に小劇場で間近に観た『にんぎょひめ』(to R mansion )のほうが迫力が伝わり、客席も沸いていたと思う。

テレビで一時期よく見たタレントが役者として参加していたが、大きな会場の演劇にはそうした付加価値がどうしても必要なのかもしれない。