大井川通信

大井川あたりの事ども

ワコール・リーカーミシン館の絵葉書

ネットのオークションで見つけた日本万国博覧会(1970)のパビリオンの絵葉書が届く。万博関連では高値のものも多いが、これは数百円だった。

ワコール・リッカーミシン館。平板な渦巻き状の白い建物の上に、大きな平たい円盤状の屋根をかかげた未来的なデザイン。あのころの僕らが夢見た「未来」のイメージを体現したような建物だ。屋根の円盤はやじろべえの原理で中心の一点のみで支えられているから、不思議な浮遊感がある。女性のファッションや家事にかかわる両企業のパビリオンらしく、展示のテーマは「愛」だったそうだ。

今はなきリッカーミシンは、僕の父親が勤務していた企業だから、愛着がある。美術館を作ったり、企業スポーツに力をいれて、オリンピックに選手を何人も送り込んだり、野球の実業団チームからはプロ野球選手を輩出したり、万博のパビリオンに出展したり、経営者が強気で派手なふるまいが好きだったのだろう。

本当に勢いがあったのは高度成長期で、70年代を通じて停滞し、80年代に入ると粉飾決算が発覚して倒産した。父親は、嘱託職員として倒産の直前まで勤めていたと思う。

旅館に泊まるような家族旅行をしたことのないつましい生活だったから、日本中が大騒ぎをした万博を見に行くことなど想像することもできなかったが、父親の働く企業のパビリオンの存在は、子ども心に多少は誇りだったのかもしれない。今頃になって、この絵葉書を思わず購入してしまうくらいだから。

ところで、ネットオークションを見て、リッカーミシンの製品や部品が今でも山ほど出品されていることに驚いた。これがモノづくり企業の本領というものだろう。僕が最初に就職して10数年後に倒産した生命保険会社を検索しても、モノの痕跡はほとんど残っていない。

 

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