大井川通信

大井川あたりの事ども

2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

読書会のあとで

現代詩を扱う本をレポートする読書会が終わった。あらためて思ったことが三つ。 まずは、特定の世代以降、やはり現代詩が読まれなくなっているということ。 次に、自分なりの気づきや発見がありさえすれば、どんな分野でも、なんとか語り通すことができると…

コロッケとメンチカツ

読書会で林芙美子の短編を読んだ。やはり話題は「貧乏」のことに。そこで、自分の貧乏エピソードを話してみた。 子どもの頃、夕食のおかずなどでコロッケを食べることはあっても、メンチカツを食べる機会はあまりなかった。もしかしたら経済的な事情というよ…

好きな詩人を読んでみよう

粕谷栄一(1934-)は、一貫して不条理な寓話風の散文詩を書き継いでいる詩人。現代詩文庫に入っている処女詩集『世界の構造』を読んでファンになったため、目についた時に購入した詩集を二冊持っている。そのうちの一冊『鏡と街』(1992)を、5年ほど前に半…

平山鉱業所の話(その2)

津屋崎海岸に面して建つ旧旅館に住む友人がいる。その旧旅館の別館を老朽化のために取り壊すことになった。友人は、現代美術にかかわりを持つ人だったから、その前に旧旅館全体を会場にして、現代美術展をおこないたい。それも半年くらいの期間を使って、会…

平山鉱業所の話(その1)

新刊の『絵はがきの大日本帝国』(二松啓紀著 平凡社新書)をながめていたら、産業発展をあつかった章で、炭鉱関連の二枚の絵葉書の画像があった。ただ二枚とも平山鉱業所のものなのが、少し意外な感じがした。全国には、はるかに規模が大きくて有名な炭鉱が…

無名の詩人を読んでみよう

数少ない有名な詩人以外にも、多くの人が詩を書いているだろう。彼らは、さほど名が知られていないという意味で「無名」の詩人といえる。たまたま目に触れて気に入ったからとか、知り合いから紹介されたから、などという理由で、彼らの詩集も何冊か、僕の書…

『重版未定』 川崎昌平 2016

『労働者のための漫画の描き方教室』が、とても面白かったものだから、同じ作者の「本業」の漫画の本を読んでみた。『描き方教室』の方で、著者の実際の生活や思想を知っていたので、いっそう楽しく読めたと思う。背景のない単純な絵柄は同様だが、漫画とし…

新しい詩人にも挑戦してみよう

思潮社の現代詩文庫で『三角みづ紀詩集』を読んでみる。以前詩を扱う小さな書店に行ったとき、ちょうど詩人がゲストとして来るイベントの直前で、平積みになっていたので、つきあいで購入したもの。三角みづ紀(1981-)は、僕でもなんとなく名前は知ってい…

まずは、わかりやすい詩から読んでみよう(その3)

今回のにわか仕立ての詩論のシリーズは、たまたま手元にある詩集と詩に関するなけなしの知識を出発点にするつもりである。実はわかりやすい詩で、まっさきに思い浮かんだのが、井川博年(1940-)だった。 内容的には、身辺雑記や回想風のエッセイがほとんど…

まずは、わかりやすい詩から読んでみよう(その2)

近頃、衛星放送で、1973年のドラマ『雑居時代』を見ている。子どもの頃、夕方の再放送で夢中になってみた、いわゆる石立ドラマの一本だ。亡くなってしまった石立鉄男も大原麗子も、みな若い。現在老成してしまったかに思える日本社会も、当時はまだ猥雑で、…

まずは、わかりやすい詩から読んでみよう

なぜ僕は詩を読まないか。こんな基本的な問いを考えるのだから、日ごろ気になっている幼稚な疑問についても、ずるずると明るみに引きずりだしてこないといけない。まずは、詩のわかりやすさ。 現代詩は多くは難解であって、特別な言葉使いや表記を駆使し、日…

なぜ僕は詩を読まないか

10日ばかり先に開催されるとある読書会で、僕は現代詩の入門書について報告することになっている。報告者をかって出たのも、本を選んだのも自分だから文句はいえないが、どうも準備がはかどらない。気持ちがのらない。今回、知ったかぶりの知識ではなく、そ…

歴史の男/カリスマ〇〇(虚勢の論理)

足の養生中のため、またワイドショーネタ。 某アマチュアスポーツ協会の内紛で、会長が辞職に追い込まれた。長年の強権的で横暴な振る舞いが、火をつけたらしい。自らを終身会長にして、補助金を勝手に配分したり、試合でも身びいきな判定を強要したりと、め…

トボトボと歩いてきた自分の中の道を大切にする

昔の手帳の欄外に、メモしていた言葉。鶴見俊輔の言葉なのは間違いないが、今では本の題名もわからないので、確認することはできない。 トボトボと歩いてきて、そして今も歩き続けている道。それは一本道ではなくて、たくさんの分かれ道や寄り道を、突当りや…

『マルクスの根本意想は何であったか』 廣松渉 1994

お盆に偶然、廣松渉の生家跡を訪ねることになった時、出かけに書棚から抜き出した本。この時期は、亡くなった人のことを思い返すのにふさわしい。お盆の習慣がない家に育ったために、今頃になってそんなことに気づく。往復の西鉄電車で、筑後地方の田園風景…

『労働者のための漫画の描き方教室』 川崎昌平 2018

とてつもない奇書、というか快著である。今までに読んだどの本にも似ていない。似ているとしたら、白っぽい菓子箱か、弁当箱だろうか。 まず、題名。60年代の左翼運動の時代のにおいがする。しかし、著者はまるで党派的でない。原発反対の人間ならば、むしろ…

神隠しをめぐって

山口県で2歳の幼児が行方不明になった、というニュースが連日報道されている。家族にとってはとんでもない事件だが、このネタが全国ニュースで報じられるのはどうかと思っていた。ただ、田舎で2日間も見つからないのは、たぶんもうダメだろうと。 それが今…

『ナンシー関の耳大全77』 武田砂鉄編 2018

面白かった。1993年から2002年の間に雑誌連載され、単行本化されたもののベストセレクションである。大部分が読んだ記憶のあるものだが、時代をおいてあらためてゆったりと活字を組んだ紙面で味わうと、彼女の絶妙ともいえる指摘やこだわりと、それを最小限…

廣松渉の生家跡再訪

10年ほど前に、廣松渉の小学校時代について聞き取りをした。上司が廣松と同郷で、たまたま上司の母親が小学校の同級生だったのだ。その時のエピソードは「哲学者廣松渉の少年時代」というタイトルで、ブログに載せている。 昨年末に上司のお母様が83歳で亡…

ツクツクホウシの聞きなし

以前にも書いたが、僕の特技の中に、ツクツクホウシの鳴きまねができるというのがある。小学校のある夏の自由研究で、ツクツクホウシの鳴き方の調査をしたために、すっかり身についてしまったのだ。 ある時、得意になって鳴きまねを披露しているときに、誰か…

教祖の自伝

オウム事件の頃だったと思う。高校生の知り合いがいたのだが、彼は、当時オウムのライバル教団と目されていた教団に入れあげていた。今でもそうだが、出版活動を布教の武器にしている団体だ。 地元の進学校に通っているその若い知人には、何回か直接話したり…

天保通宝の来歴

少し前から、お財布に天保通宝を入れてある。なぜそんなことを思いついたのか、はっきりと覚えていない。ただ、生まれた時代が違っても、同じコインということで、小銭入れの中でよくなじんでいるのに驚いている。 レジの時に、500円玉の代わりに出しても良…

ザシキワラシのいる家

我が家には、現在、ザシキワラシがいる。いるかもしれない、とか、いるみたいだね、とかいうことでなくて、あたりまえの事実として、いる。 今朝も、妻が寝過ごしそうになったときに、寝室に誰かがばたばたと駆け込んできて、またばたばたと出ていったので、…

例外的な少数者の思想

学校教育は、十把ひとからげに批判されることが多い。特に、その集団主義的で鈍感な部分が、知的に早熟な子どもたちにとっては耐え難いから、彼らにトラウマのような恨みをあたえてしまいがちだ。知的に早熟な子どもは、社会的にも知的にもエリートとなる可…

『虫のいろいろ』 尾崎一雄 1948

最近、ようやく虫のカテゴリーを立ち上げて、名前を「虫のいろいろ」にしたので、本家の小説を手にとってみた。短編だが、一部分は読んだ記憶がある。試験問題や副読本で部分的に読んだことがあったのだろうか。 ところで、有名な作品だが、あまり良くなかっ…

いつかはクラウン

いつかはクラウン、などと思ったことはない。子ども心に、いつかはポルシェにのりたいと思ったが、それは夢みたいなものだ。ただし、周囲の大人を見ていると、年配の人は、それなりに大きくて立派な車にのっていた。だから自分もそうなるのかと、漠然と思っ…

はさみでチョキン

もう20年も前の話だが、とても気難しい上司がいた。そのうえ、ほとんど口を開かない。部下が書いたあいさつ文を読み上げるときなども、すぐに声が小さくなり後半はほとんど聞き取れなくなる。僕はほんの若造だったから、職場で彼との接点はまったくといって…

軽口をたたく

書き言葉としては自分の中に入っている言葉だが、どう読むのかは自信がなかった。「かるくち」とわかってもまるで耳になじみがない。話し言葉としては、おそらく死語に近いと思う。ギャグや冗談という言葉がそれに代わって、なんの不自由もないからだろう。 …

車椅子からの目線

数日前に、右足のくるぶしに違和感を覚えた。アキレス腱をかくんと伸ばしてしまったような。そのあと二日間は、さほど無理している感覚もなく散歩などしていたが、昨日から足を引きずるようになって、夜にはまったく歩けなくなった。 今朝からは痛くてかかと…

アオスジアゲハの羽ばたき

黒いアゲハの大きくて悠然と飛ぶ姿は、優美でドキッとさせられる。しかし、それがクロアゲハなのか、カラスアゲハなのか、はたまたナガサキアゲハなのか、さっぱり特定できない。実物の特徴を頭に入れて、あとで図鑑で確かめることもあるのだが、すっきりと…