大井川通信

大井川あたりの事ども

モノの話

続・本をならべる

僕は、もともとどんなふうに本をならべていたのだろうか。 文庫や新書や叢書などは、種類ごとにひとまとめに並べる。それ以外の単行本は、だいたいジャンルごとに並べているけれども、本のサイズをできるだけそろえて、それも高さ順にきれいに並べたい気持ち…

本をならべる

3年ばかり前から、読んだ本を順番に並べていくスペースを別に設けるようにした。僕の目下の「寝室」の洋服ダンスの上だ。 根気のない僕は、読みだした本をなかなか読み切ることができない。読了本を並べる場所を設けることで、そこに並べたいという動機によ…

レンズ・トラス橋の話

8月1日は、僕がはじめて北九州の小倉に足を踏み入れた日付だ。今から36年前になる。たまたまそれを思い出したこともあって、夫婦で小倉までドライブすることにした。 黄金市場の九兵衛で評判のうどんを食べ、成屋で饅頭を買ったけれど、「なんもかんもたいへ…

家庭盤の話

それでは、いろいろなボードゲームが全盛だった子ども時代に僕の家にあったゲームといえば、家庭盤だった。それしかなかった。しかし、それをずいぶん楽しく遊んだ記憶がある。姉弟や、親せきの子どもたちや、友達と。 家庭盤は、両面を違ったゲームが印刷さ…

レーダー作戦ゲームの話

軍人将棋は、いかにも戦前の旧日本軍のイメージを引きずったものだったが、もっとスマートな軍事ゲームも流行っていた。 魚雷戦ゲームは、海面に見立てたプラスチック板の両端に敵味方の軍艦を並べ、交互に発射するパチンコ玉のような魚雷が半透明の板の下を…

軍人将棋の話

将棋盤と駒をひさしぶりに取り出してみたら、同じ場所に軍人将棋の駒がしまってあった。厚紙の箱のフタには、昔風のロケットや戦車の絵が描かれていて、うらをかえすと手書きで70円とある。 昔は小学校の校門の近くに小さな文具店があって、この軍人将棋はそ…

将棋の話

中学生棋士として連勝記録を打ち立てた藤井聡太棋士が、いよいよタイトル戦に登場して、相変わらず将棋ブームが続いているようだ。やはり、ブームにはスターというものが欠かせない。 僕が子どもの頃のスターと言えば、大山康晴十五世名人や中原誠名人であっ…

同期会というもの

僕が、大学を出て最初に就職した会社にも、同期会というものがあった。4か月にわたる研修期間中、共同生活をしたり、販売実習で班別の競争をしたりで、同期の30数名のきずなは深まった。 おそらく研修担当の職員たちの示唆があったのだろうが、自主運営の同…

カービィとおにぎり

僕が食い意地がはった人間であることは、何度か書いている。まだ日本が貧しかった60年代に、富裕とはいえない家庭に育った者の宿命と、自分勝手に解釈してあきらめているが、ポストモダンの飽食の時代に育った息子たちの食べ物へのライトな感覚には、あぜん…

窓から見えるもの

今の職場の机から目をあげると、窓ごしに松林の上の空を見ることができる。そこには、たいていトンビやカラスの姿があるが、時にはミサゴが飛ぶのが見える。 ミサゴは、英語名はオスプレイ。空中で自在に姿勢を変え、水中の魚をめざしてダイブする、あの勇敢…

角帽とミロク菩薩

正月があけて姉があそびに来てくれた時、僕の大学の角帽をもってきてくれた。実家のたんすの奥に大事そうにしまってあったのだという。 年末に、空き家になっていた実家を従兄に贈与する契約をした。今まで帰省した時に、目についた本や品物は持って帰ってい…

赤色巨星の憂鬱

オリオン座の一等星ベテルギウスの明るさが昨年末から急に暗くなり、これまでの半分以下になってしまったことを新聞で知った。それからしばらく曇りや雨の日がつづいていたが、今日ようやく星空を見上げることができた。 なるほどオリオン座の右肩にあたるベ…

トミカ50周年

ミニカーのトミカが誕生して、今年で50年になるそうだ。その時発売されたラインナップのうち、トヨタ2000GTとファレデイZという二種類のスポーツカーのモデルを買った記憶があるので、小学3年生の僕は、トミカの誕生に立ち会ったことになる。 そのことが書…

初代ターセル後期型ソフィア 1981-1982

箸休めにもならない内容だが、僕が生まれて初めて購入した車がなんであったか、という話。 会社員になって二年目だと思うが、中古車屋から40万か50万くらいで1300㏄の3ドアの赤い小型車を買った。1985年のことだ。免許を取ってから1年以上空いていたから、…

京都精華大学セット

大井の古民家カフェ村チャコの小川さんの息子さんが、京都精華大学に進学することが決まったらしい。ジュンノスケ君のことは、中学生の頃からよく知っているから、お祝いに何か贈りたい。それで、手持ちの蔵書から、この大学の先生の本をセレクトして渡そう…

手帳の話

今年もまた、新年度の手帳を購入する時期がやってきた。 僕は、若いころから仕事用の手帳を使ってきたけれども、その使い方はまるで下手だった。ほとんどを捨てずに持っているので、それを見比べると一目瞭然だ。 まるで日記みたいに、年度当初だけつけて、…

飛行機ポンポン

出張で東京を往復する。東京行きは、このところずっとスカイマークのボーイング737だ。 ひと頃のジャンボやエアバスに比べたら、ずいぶん小柄でほっそりしている。だいいち、エンジンも両翼に一つずつしかついていない。バードストライクとかで、エンジンの…

缶コーヒーの思い出

最寄り駅の近くの自販機で、UCCのミルクコーヒーを販売するようになった。上から茶色、白色、赤色の帯で3色に塗り分けられ、真ん中にUCCのロゴが目立つ缶コーヒーを自販機で見るのは、本当に久しぶりな気がする。 遠慮がちに金額も80円と控えめだから、つい…

ひさの5周年祝賀会手品演目

ひさの5周年のお祝いの食事会に招待された。昨年のデイサービスゆいまーる5周年に引き続いて、手品を披露する機会をいただいた。小学校以来、芸歴は50年近くになるが、ステージマジックを実演する機会はめったになく、できる演目も限られている。 記憶に…

テンもいてんの?

玄関先のポーチに細長い小さなフンが置かれている。妻に聞くと、以前から時々見かけるらしい。ネットで調べると、イタチのフンであることがわかった。 イタチは石張りの玄関にフンをすることを好むという習性までわかった。フン害にあった人が、ネットで現場…

『金沢城のヒキガエル』 奥野良之助 1995

昔、僕にもヒキガエルは、なじみのある生き物だった。実家の脇には200坪くらいの雑木林の空き地があって、「原っぱ」と呼んでいた。そこには当然のようにヒキガエルが住んでいて、夜に家の玄関に飛び込んできて、家族で大騒ぎしたことを覚えている。街では、…

非常階段の話

ガチャガチャ(ガチャポン)のおまけには、とても変なものがある。200円か300円を入れて、ハンドルをガチャガチャと回して、カプセルを出す、あれだ。昔は10円のガチャガチャだった。今では、100円のものでも見当たらない。 ガチャガチャのコーナーをのぞい…

眼鏡の話

僕は、子どもの頃から視力がそこそこ良くて、2.0の時もあった。本は好きでも、実際に読む時間は短いことも幸いしてか、大人になって視力が目に見えて下がることもなかった。テレビゲームもしなかったし、仕事以外でパソコンをいじる趣味もなかった。 老眼で…

イノシシと野ウサギ

かつては、人間たちのくらしの身近な隣人だった動物たち。都会暮らしとは言わないまでも、ふつうに街で暮らしていると、彼らに出会う機会はまったくなくなっている。昔話や絵本でおなじみの動物でも、実際の姿には驚くことが多い。 たとえばイノシシ。僕は昔…

切り株の話

椎名誠に「プラタナスの木」という小説があって、小学校の国語の教科書にも載せられている。公園のプラタナスの木と子どもたちをめぐる話で、その中に、木は枝と同じくらい地中に広く根を張っている、と書かれていた。切られてしまったプラタナスの切り株に…

表札をかえる

実家を取り壊すことになって、いくらか実家の備品を持ってきたけれど、その中に表札がある。父親が知人に彫ってもらった木の表札で、おそらく40年くらいは玄関にかけられていた。ずっと両親の面倒を見てくれて実家の管理をしていた姉だけれども、この表札に…

手品の思い出(アストロコイン)

マッチ箱から、三本のマッチ棒を取り出し、テーブルの上に小さな三角形をつくる。その真ん中にコイン(金属のメダル)を置いて、カードをかぶせる。マッチ箱をそのカードの上にのせてから、カードごと取り去ると、マッチ棒で囲まれていたはずのコインが消え…

手品の思い出(コインの飛翔)

手品の種を買うだけではなくて、子供向けの手品の入門書を読んで、手品を覚えようともした。しかし、はっきり言おう。入門書に説明してある手品で、人を驚かせられるものなんてほとんどない。お金を払って買った種だって、使いものにならないものが大部分な…

手品の思い出(テーパー加工)

中学生の頃になると、友人たちの中には資金力にものを言わせて、いろいろな手品道具に手を出す者も出て来る。資金力では劣る僕だったが、幸いなことに、手品道具はそこまで高価なものではない。天体望遠鏡のように友だちの高額の大口径望遠鏡を指をくわえて…

手品の思い出(リングとコイン)

親戚のおばさんから「悟空の玉」を見せられた後のことだと思う。もう一つ鮮烈な手品体験があった。ある時小学校の通学路の途中で、手品を見せて売っている人に出会ったのだ。住宅街の中の学校だから、通学路でモノを売る人など珍しかったと思う。当時は、学…