大井川通信

大井川あたりの事ども

サブカル

父親と落語

父親は渋谷道玄坂の生まれだった。戦前のことだから、父親の家族は転々と借家を替わったらしい。今でいうと「懐古厨」というのだろうか、父親は、昔住んでいた場所を訪ね歩くことがあって、何か所か、子どもの頃つきあわされたのを覚えている。もちろん、当…

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』 フレデリック・ワイズマン監督 2017

ひょんなことで、図書館に関する勉強を始めている。テキストや雑誌に目を通し、図書館をめぐる最新動向をにわか勉強した。図書館ではないけれども、社会教育施設や博物館での仕事経験がある。学生時代には、公民館での活動に参加していた。 こうした予備知識…

『ほんのにわ』 みやざきひろかず 2018

みやざきひろかず(1951-)の新作絵本を、少し遅くなったが手に入れて読む。完全オリジナル作品で、大人向けであることからも期待がたかまる。 はじめはストーリーを中心に足早に読んでしまったので、絵もいいし、展開も面白いにもかかわらず、なんとなくふ…

『アジャストメント(調整班)』 フィリップ・K・ディック 1954

フィリップ・K・ディック(1928-1982)のSF短編。 ある平凡な会社員の男が、ある朝、自分の会社に出勤すると、高僧ビルは灰色に変色し、粒子や塵の堆積のようにもろくなっている。なんとか自分のオフィスにたどりつくが、同僚たちも皆、灰色の粒子化してお…

『かえるのエルタ』 中川李枝子 1964

僕が子どもの頃に持っていて、繰り返し読んで、おそらく今でも書店に並んでいる名作童話。カエルの話なので、何十年ぶりかで読み直してみる。 どうしてこの話が好きだったか、あらためてよくわかった。物語の不思議さと面白さ、言葉の魅力が詰まっている。 …

涼宮ハルヒのために

京都アニメーションの放火事件は、僕にも相当な衝撃を与えた。無意識のうちにテレビやネットのニュースからも目を背け、新聞でも極力その記事を見ないようにしていたのだ。自然災害や大事件でニュース報道にくぎ付けになることはあっても、ニュースを避ける…

『空白の殺意』 中町信 1980(2006改稿 原題『高校野球殺人事件』)

中町信(1935-2009)の推理長編を読むのは、三作目だ。ミステリーファンでない僕が彼の作品にひかれるのは、それが世界の中に仕掛けられた謎というより、世界そのものの成り立ちの謎を示唆しているように思われるからだ。 この意味でいうと、前二作よりもず…

『セミ』 ショーン・タン 2019

6月の終わりくらいを皮切りに、自宅の庭でクマゼミの抜け殻を見かけるようになった。今年初めに植木のレッドロビンをすべて抜いて庭土を掘り返してしまったから、地中のセミが心配だったのだが、すでに10個近くの抜け殻を発見している。鳴き声も一週間く…

コンビニの手塚治虫

大阪道頓堀近くのコンビニで手塚治虫ベストセレクションという短編集を500円で買った。どういう出版や流通の仕組かは知らないが、以前からコンビニの漫画コーナーには、かつての名作がペーパーバックになって安価で売られている。しかしとっくに漫画を読む習…

花月と東洋館

昨年家族の要望で、浅草で漫才を見たいというので、東洋館という寄席に入ってみた。とんでもなく下手な若手や、とんでもなく変なベテランが出演していたが、思ったよりずっと面白く、刺激的な体験となった。 それで今日は、大阪に行くついでに、なんばグラン…

流全次郎の旋風脚

いとうせいこうが、「通信空手の有段者」だという記事を見て、自分も高校時代に通信教育で中国拳法を習っていたことを思い出した。というと、ずっと忘れていたみたいだが、実は、ことあるごとにそのネタで笑いをとってきたのだ。 さらに本当のことをいえば、…

『侵入者』 折原一 2014

叙述トリックを得意とする推理作家というイメージのある折原一(1951-)の、比較的新しい作品を読んでみる。90年代の前半の頃に、熱心に面白く読んだ記憶があるが、その後遠ざかっていた。 ミステリーファンでないのでおおざっぱのことしか言えないが、折原…

『天啓の殺意』 中町信 1982(2005改稿 原題『散歩する死者』)

本文庫の解説者は、「叙述トリック」を「Aという事柄(人物)をBという事柄(人物)に錯覚させるトリック」と定義している。僕は推理小説の中でも、このトリックに特に魅力を感じてきた。そこには、何かこの世界の成り立ちの秘密に触れるようなところがある…

『模倣の殺意』 中町信 1971(2004改稿 原題『新人賞殺人事件』)

久しぶりに推理小説を読んだ。推理小説は一時期熱心に読んだことはあるが、何かが語れるような読者では全くない。この本も、書店で「これはすごい」という帯を見て、気まぐれに手にとったものだ。 面白かったので一気に読めたが、思ったより昔の作品で、僕の…

「闇綱祭り」 諸星大二郎 2013

昨年出版された『雨の日はお化けがいるから』所収のこの作品は、発表の雑誌で読むことができたから、該当ページをとりはずして保存してある。初期の頃のような、シンプルだけれども力強いイメージ。正直、今でも新作でこれだけのものが読めるのかとうれしか…

「氷の微笑」 星野之宣 1999 

『宗像教授伝奇考』から雪女に関するエピソードを取り上げた勉強会でのレジュメの抜粋。以下、エピソードの粗筋。 ・1930(S5) 与次平の母、結核のため療養所に隔離。 ・1937(S12) 与次平の父、山中で微笑しつつ凍死。・1946(S21) 駆落ちの女、独居の与…

『コンプレックス・シティ』と諸星大二郎さんのこと 

大学を出て地方都市で一人暮らしを始めた頃、仕事が面白くないこともあって、漫画をむさぼり読むようになった。諸星大二郎(1949-)は、高校時代から『妖怪ハンター』で知ってはいたが、この頃繰り返し読んだ『コンプレックス・シティ』(1980)が、とりわ…

フィギュアを買う

少し前に、10年近く遅れてアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006、2009)を見て、その内容に驚いた。そのあと、これも名作だと評判の高い『魔法少女まどか☆マギカ』(2011)に衝撃を受けて、すっかり夢中になってしまった。何ごとに関しても飽きっぽく、消化吸収…

神戸の鉄人

もう7,8年前になるだろうか、神戸に寄ったついでに、長田区にある鉄人28号の「実物大モニュメント」を見に行ったことがある。地元商店街等でつくる「神戸鉄人プロジェクト」が、2009年に震災復興と地域活性化のシンボルとして完成させたもので、当時はニュ…

『チョコレートをたべた さかな』 みやざきひろかず 1989

この絵本を手に入れた時のことは、よく覚えている。家の近所の大きなスーパーの一階にある本屋さんの絵本コーナーに平積みになっていたのだ。ずいぶん前に閉店してしまったお店だけれども、絵本には強いこだわりのある本屋さんだったと思う。 単色の水彩画に…

鉄腕パンチ/電光回し蹴り

チャンネル権が父親にあったので、学校で子どもたちが話題にする番組をみることができなかった。ドリフターズや歌謡番組、アニメなど。しかし、まったく記憶にないわけではないのは、父親がお風呂に入っているときにでもこっそり見ていたのだろうか。 父親は…

「祝辞」 NHK 土曜ドラマ 1971

結婚式のスピーチで思い出すのは、子どものころ観たあるドラマだ。当時チャンネル権は父親が掌握していたから、父親から公認されたドラマ視聴だったのだろう。それで僕の記憶に残っているのは、妙に大人びた番組ばかりということになる。 記憶では、「テーブ…

聖地巡礼巻き戻し篇 (その2)

旅行から戻って、さっそく近所のレンタルビデオ店に行ったのだが、残念ながら在庫がない。配信とかもあるらしいが、おじさんには何のことだかよくわからない。近くの書店によると、原作の漫画の方はずらっと並んでいたので、数冊買って帰った。 しかし実は若…

聖地巡礼巻き戻し篇 (その1)

家族旅行で小豆島に出かけた。海岸沿いのホテルに泊まって、ロビーの観光案内のチラシをあさっていると、テレビアニメの舞台となった場所を示した地図が置かれている。いわゆる「聖地巡礼」用のものだが、聞いたことのないアニメだ。 『からかい上手の高木さ…

『重版未定』 川崎昌平 2016

『労働者のための漫画の描き方教室』が、とても面白かったものだから、同じ作者の「本業」の漫画の本を読んでみた。『描き方教室』の方で、著者の実際の生活や思想を知っていたので、いっそう楽しく読めたと思う。背景のない単純な絵柄は同様だが、漫画とし…

『労働者のための漫画の描き方教室』 川崎昌平 2018

とてつもない奇書、というか快著である。今までに読んだどの本にも似ていない。似ているとしたら、白っぽい菓子箱か、弁当箱だろうか。 まず、題名。60年代の左翼運動の時代のにおいがする。しかし、著者はまるで党派的でない。原発反対の人間ならば、むしろ…

笹の葉ラプソディ

『涼宮ハルヒの消失』からの流れで、七夕にちなんで、ハルヒのアニメシリーズの『笹の葉ラプソディ』を観なおしてみた。 アニメは、大学時代に『装甲騎兵ボトムズ』にはまったのを最後に、ガンダムもエヴァンゲリオンも見ていない。ようやく数年前に、たまた…

『サブカルの想像力は資本主義を超えるか』 大澤真幸 2018

読書会の課題本。後書きを見ると、著者は講義で話をしただけで、事実誤認の修正や内容の補足を含めた、本にするすべての作業を他者にゆだねていることがわかる。だから、当然ながら、とても「雑な」印象の本だ。そして、雑であることに関して、著者はおそら…

『涼宮ハルヒの消失』2010

『君の名は』を観るついでに『涼宮ハルヒの消失』を借りて、久しぶりに観た。やはり良かった。二作続けて観ると、後者の描く世界の広さや深さがきわだっているように感じられた。もちろん、前者もすぐれた愛すべき作品だし、原作とアニメのシリーズを背景に…

バベルの塔

マウス型ロボットが/高速戦車に追われて/砂嵐の砂漠を疾走する 戦車がロケットを発射すると/マウスは敵もろとも/砂を噴き上げて自爆する あと一台・・・ 薄暗い塔の中/バビル2世は/大型モニターを見上げて/防衛システムに次々と指令を出す/すでに/…